感涙療法 

大昔は負の感情や脆弱さは「恥」のようなものであると考えられてきたようです。2011年に行われた文化と涙に関する調査では、日本は世界で「最も泣かない」国のひとつであることが明らかになりました。 

孤独感を解消し、充実した社会生活を送っているように見せかける「レンタルフレンド」サービスが登場したことからも、私たち日本人がいかに寂しさを見せたがらない人種であるかが分かるかも知れませんね。

しかし、実は日本全体が泣きたい気分になっているのではないでしょうか。そこで登場したのが、「なみだ先生」こと吉田英史さんです。2013年以来、吉田さんは5万人以上に感涙療法を実施してきました。そのほとんどは「涙活(るいかつ)」と呼ばれるもので、免疫力を高め、デトックス効果やストレス解消効果が得られます。この涙活こそ、いま私たちが求めているものかも知れません。

「Emotional Freedom」の著者であり、UCLAの臨床精神医学教員であるジュディス・オルロフ医学博士は、「涙を流すことで身体からストレス物質が放出され、身体が天然の鎮痛剤であるエンドルフィンを生成します」と言っています。近年、博士はこの感涙療法に関し、多くの質問を受けています。

涙をこらえると緊張や不安が蓄積され、高血圧、筋肉の緊張、心配、痛みなど、身体に悪い影響が出てきます。博士は、別離の後の悲しみを拒否したせいで、症状が非常に悪化した患者の例を知っています。博士は、「泣くことは痛みを表現する自然な方法です。この感情を吐き出さないと、うつ病になる危険性もあります」と付け加えています。吉田さんも、泣くことで健康になることを人々に知らしめるため、東邦大学医学部名誉教授であり「ストレスから心を解放する技術」の著者である有田秀穂さんと一緒に感涙療法を始めました。

治療だけではありません。「涙」はリジュビネーション(若返り)セッションにも利用されています。東京のある企業は、「イケメソ男子(泣く美男子)」サービスの提供を開始しました。「泣くことは女性の領分だ」というイメージを払拭するため、格好良くハンサムな「男性歌手」「剣士」「歯医者」といった魅力ある男性を登用し、多額の報酬を支払っています。

更に近年では、YouTube動画や映画のワンシーン、保険のCMを見て一緒に泣くという「涙クラブ」なるものも数多く登場しています。涙はもう社会現象と言っても過言ではありません。スクリーンには2011年3月の東日本大震災における人間模様からペットと会話する家族まで、様々な映像がジェットコースターのように次々と映し出され、観客はそれを見てひたすら泣くのです。

うさぎカフェや下着の自動販売機など、変わったものが存在する日本では、このように一風変わったとも言える健康ブームの感涙療法が、一大ムーブメントを巻き起こしています。